日誌

【研究授業】話をつなげ、学び合う児童を育てる ~話す・聞く単元におけるChromebookの活用法~

 潤徳小学校では、令和3年度から3年間にわたり、

「主体的に考えを表現し、学び合う児童の育成」~Chromebookの効果的な活用法の研究~

という研究主題のもと、授業改善を進めています。本日、第2学年国語科「みんなで話をつなげよう『そうだんにのってください』」の研究授業を行いました。

話をつなげ、学び合う児童を育てる

~話す・聞く単元におけるChromebookの活用法~

 「そうだんにのってください」は、国語科における「話す・聞く」単元の一つです。この単元では、A「互いの話に関心をもち、相手の発言を受けて、話をつなぐこと」の力を付けます。

低学年分科会として、研究授業にこの単元を選んだ理由は、新型コロナウイルス感染症の影響があります。昨年度まで、感染症対策のため、密になる少人数での話し合いは積極的に行うことができませんでした。しかし、社会の複雑化が進む中、多様な他者との「対話力」を身に付けることは、より一層重視されてきています。そこで、話す・聞く単元において身に付けたい力を明確にし、しっかりと育てていこうということになりました。

Chromebookを話す・聞く力を付けるための「サポートツール」として位置付け、以下の2点において活用することを研究授業において提案しました。

  •   自分が話したり聞いたりしている様子を動画として記録に残し、よりよい話し合いに生かす
  • Google Formで振り返りを積み重ね、成長を実感するとともに、次の学習につなげる

 

 上記の2点を毎回の話し合いにおいて行いました。授業の様子を写真とともにお知らせいたします。

 

 授業のはじめに、今まで学習した「話し合い名人の技」を確かめました。

 

まずは、「聞き方あいうえお」です。これは、1学期から1・2年生に繰り返し伝えてきた「良い聞き手」の合言葉です。1学期は、何度も「ペアトーク」を行い、「聞き方あいうえお」にあるような聞き方を身に付けられるように学習を積み重ねてきました。

次に「うけとめる」「くりかえし」「思ったことを言う」「しつもん」です。この4点は、初めて3人以上の話し合いにチャレンジした際に子供たちと見付けた「話がどんどんつながるグループの共通点」です。

 本時の話し合いでは、どんなことを頑張りたいか、一人ひとりめあてを決めます。前時の話し合いにおける振り返りのデータを集計したグラフも見てみました。

 

前時は、「くりかえし」と「しつもん」に課題があったようです。クラス単位の得意・不得意も確認し、全員が本時の話し合いにめあてをもって取り組めるようにしました。

 本時の相談者を確認したら、いよいよ話し合いの始まりです。

 

 A「宿題をいらいらしないでするには、どうすればいいと思いますか」

B「一回、ゆっくり深呼吸してからやるといいと思います。」

A「それはいいですね」

「思ったことを言うこと」と「うけとめる」がしっかりできていますね。

 

あるグループでは、このような相談がありました。

C「ドッジボールで強く投げるためにはどうすればいいですか。」

D「筋肉もりもりになるといいと思います。」

C「どうすれば筋肉もりもりになるんですか。」

D「ダンベルを持つといいと思います。」

相手の発言を受けて、質問をすることが上手にできています。

  

3分間の話し合いの後、相談者は、友達からの考えを受けて、どうすることに決めたか、伝えます。

「〇〇さんの考えをやってみようと思います。なぜかというと…」

 

 次に、話し合いの動画を観て、自分たちの話し合いがどうだったか振り返ります。

「いいねって言えているよ。」

「〇〇ちゃん、『くりかえし』が上手だね。」

 

動画を視聴した後は、Formsに「話し合い名人の技」がどれぐらい使えたか、振り返りを入力します。

また、「ミライシード」の「オクリンク」にも振り返りを入力します。「オクリンク」を使うメリットは、入力した内容を他の児童にも見てもらえることです。積極的に挙手をすることが難しい児童も、考えていることを共有することができます。

話し合いを通してよかったことを話し合う際には、オクリンクに送られた振り返りのカードを掲示しながら行いました。

 

うまく話し合えたグループの動画も視聴しました。

この動画は、話し合い終了後にすぐに子供たちが「Googleドライブ」にアップロードしたので、教員の端末からも、子供たちの端末からも、視聴することができます。以前の話し合いの動画も残っているので、成長が目に見えて分かります。実際に動画を観ながら、よいところを確認していきました。

 

3人グループのうち、前時と本時で2人の相談を終えました。次回の話し合いで、最後になります。子供たちの「対話力」がどれだけ伸びていくのか、楽しみです。

  授業後は、帝京大学 教授福島 健介様を講師としてお招きし、研究協議会が行われました。協議会では、以下のような成果と課題が出ました。

【成果】

  • 動画で振り返ることで、自分の姿を客観的に見ることができ、できていることやできていない課題を見つけることができた。
  • 録音にイヤホンを使うことは、話し合いの声をよく拾い、大変有効だった。
  • 明確な視点をもって振り返りをしていて有効だった。

【課題】

  • 話をつなげるという点において、不十分な点が見られた。
  • 机の配置など、話し合いに不適切なのではないかと思われた。

 

また、福島先生からは、このようなご指導をいただきました。

【成果】

  • 「話すこと・聞くこと」の児童の「課題」のとらえ方が正確でした。

 令和4年度「学力・学習状況調査」によると、「相手とのつながりをつくる言葉の働き」を捉えることに課題が見られたことが明らかになっています。その理由として、「話し合いは意見を一つにまとめるためのものであるという意識が強くある児童もいた」ことが挙げられます。今回の授業は、話し合いとは意見の集約だけでないことを提案したことにおいて、価値がある授業だったと思います。

【課題】

  • 「話をつなげる」とはどういうことでしょう。それは、話し手が発信した後、受け手側が、自分の中でどのように情報を処理して、発信し返すかということです。しかし、指定された「技」に終始し、形骸化していたと思われます。
  • これからは、「学習化の個別化」が重要です。クラスの伸びよりも、自分がどうだったかが大事です。前の動画と比べる、得意を伸ばす、などそれぞれの成長を捉えることが大事です。

  

 クラスとしての成長を捉えることは、子供たちも、参観している側も、大いに盛り上がるものです。しかし、本当に大事なのは、「一人一人にとって学習がどうであったか」です。苦手を無理に伸ばす必要はありません。得意を伸ばしたって良いのです。今までの授業観を捨て、一人一人に合った学びの実現をいかに達成するかが大事です。

 授業観をアップデートし、一人ひとりにとって学びがどうであったかを考えていく必要があることが分かりました。今後の授業づくりに生かしてまいります。