日誌

「子供たちがつくる授業」(研究授業編)第一弾!【研究推進委員会より】

 

 潤徳小学校では第4次日野市学校教育基本構想を受け、「子供たちがつくる」教育活動の具現化を図っています。日々の授業の中でも「子供たちが当事者として参画し、意見し、対話する」場面をつくり出すことができるよう、今年度は以下の研究テーマのもと、授業改善を推進していきます。

 

 「子供たちがつくる学校(学習)」プロジェクトの推進

~学び合いを通して探究する児童の育成(複線型)~

 複線型の授業とは、子供たち一人一人の興味関心に応じて、クラウドを活用しながら、それぞれのペースで、それぞれが好きなタイミングで他者の考えを参照しながら行う授業のことです。従来の教師の一斉指導による一斉の学習では、35人いれば35通りある子供たちの学び方や興味関心に応じた学びを進めることができません。子供たちの主体性を重視する「子供たちがつくる」授業は、複線型の授業をイメージして行います。

 

(図2)一人一台端末活用新旧イメージ 従来授業+端末活用(2022 高橋純)


(図3)一人一台端末活用新旧イメージ クラウド活用授業(2022 高橋純)

https://www.mext.go.jp/studxstyle/special/49.htmlより抜粋

 

昨年度までの研究で積み重ねてきたChromebookの有効的な活用法を生かしながら、さらなる授業改善を目指していきます。

  

第4学年社会科「ごみの処理と再利用」における

複線型授業の実践

 第4学年の社会科では「ごみの処理と再利用」における複線型授業を行いました。

 

 はじめに、既習事項である「資源ごみ」の意味を復習します。「新しく生まれ変わることができるごみ」が「資源ごみ」です。では、「資源ごみは何に生まれ変わるのか」と本時の学習課題を確認します。

 その後、学習の仕方を確かめます。資源ごみが何になるのか、そして再利用される仕組みについて各自ノートやスライド等好きな方法でまとめます。「誰と」「どこで」「どのように」学ぶのか、子供たち自身が選びます。しかしそれは「学習のためであること」を確認します。

 学習の時間が始まると、それぞれ学びやすい形を選んでいきます。

「一緒にやろうよ」

と早速机を動かす子もいれば、素早くChromebookを開き1人で調べ始める子もいます。

顔を見合える形にしたり、横に並んで調べたり、途中から

「一緒に混ざってもいい?」

と加わる児童もいました。 

 

また、活用する資料も子供たちが選びます。

本で調べる子もいれば、

パンフレットを使う子、

インターネットで調べる子もいます。

 

 まとめ方も子供たちが選びます。

本で調べたことを直接オクリンクのスライドに書く子もいれば、

ノートにまとめている子もいます。

最終的には、ノートも撮影して、オクリンクにアップロードすることで、誰でもいつでも見られるようにしていきます。

 教師はその間子供たちの学びの様子を見守り、助言を行います。

 

調べている間にも、オクリンクの共有画面を開き、友達がどのようなまとめ方をしているのか確かめている児童もいました。

 

時間で区切り、それぞれが学んだことをまとめていきます。1つ1つの資源が何に生まれ変わるのか、分かったことを全体で確認します。

 

児童A「缶は鉄資源になることが分かりました。」

教師「鉄資源は、何になるの?」

児童B「それ私見たよ!たしか、自動車の何かになるって書いてあった!」

 

教師「ペットボトルはどうですか?」

児童C「服になる」

教師「えー!ペットボトルが服になるの?」

 

「うん、そうだよ!」とたくさんの子から声が挙がりました。

 

教師「どうやって服になるのか、調べられた人?」

児童D「細かく砕いて…えーと…」

すると、児童Eが調べるときに使用していた本を取り出しました。

児童E「細かく砕いて、ペレットになって、ペレットから切れない糸になって、それが服になるんだって。」

児童ら「へぇ~。」

 

最後に、資源ごみとして再利用されるために自分たちができることを考えました。

児童F「分別」

教師「なぜ分別が大事なの。」

児童G「別のものに生まれ変わることができないから。」

児童H「燃えるゴミだと燃やされちゃう!」

 

また、調べたことを生かしながら、できることを答えている児童もいました。

児童I「びんは、色別に分別して、割ってから生まれ変わるから、割れないようにそのままの形で捨てることが大事。」

  

研究協議会の様子

授業後は、帝京大学 教授福島 健介様を講師としてお招きし、研究協議会が行われました。協議会では、以下のような成果と課題が出ました。

成果

  • 調べることが多様で、主体的な学びを促す課題設定ができでいた。
  • まとめ方について教え合いがあった。
  • 何を使って調べるか(本7人、資料1人、他インターネット)、どうまとめるか(ノート9人、オクリンク18人)が多様で、一人一人が主体的に学んでいた。

課題

  • 途中参照を行う児童が少なく、友達の意見を参考にしているかが分からなかった。個々の調べ学習にとどまっていたように感じた。
  • 資料が少なく感じた。クロームブックでまとめる場合に、コピー&ペーストばかりになっている。

 

また、福島先生からは、このような評価・指導をいただきました。

  • 複線型の基本スタイルを抑えた授業である。
  • 複線型を追求することはゴールではない。ゴールは、「学び合いを通して探究する児童の育成」である。
  • 社会科とは、「よりよい社会について考える教科」
  • 今回の授業で言えば、「リサイクル」について多面的・多角的な視野をもって考え、課題を追求・解決することである。
  • 教師はどの段階で何を評価するのか。指導案には「理解している」ことを評価するとあるが、それぞれが学習している過程は評価しなくてよいのか。
  • 何のために話し合うのかを考えよう。従来型の授業では、「〇〇が分かりました。」「いいですね。」と発表のための話し合いになっていた。しかし、本来は「もっと知りたいから」「分からないから」「考えを取り入れて活動したいから」話し合うのである。よりよくなるために「他者参照」をし、その中で必然的に「話し合い」が生まれる。それをサポートするのが教師の役割なのである。従来型の授業で行っていた最終的な「発表」は、学習の過程ですでに話し合いが行われているのだから、必要ない。
  • まとめたことをオクリンクに挙げて考えを共有し合うのはゴールの活動ではない。
  • 途中でオクリンクを読み合う活動が欲しかった。
  • 「複線型」は授業形態の1つに過ぎない。複線型の授業をすることをねらいとしなくてよい。「学び合いを通して探究する児童の育成」を目指すこと。
  • 今後のポイントは振り返りである。自分の活動全体を統括的に見ることで、メタ認知をする。また、「他者参照」「話し合い」をする中で、自己調整学習をしていく。
  • 研究主題である「主体的に学習を続け、探究する学び合いを通して探究する児童」をどのように評価するのか。ルーブリック評価も今後取り入れていくのはどうか。
  • 複線型を重視するのではなく、どのように学び合いをさせるのかを重視する。

 

 「子供たちがつくる学習」をテーマに複線型の授業実践をしていこうと研究推進委員会で出発したところですが、あくまで「学び合いを通して探究する児童の育成」を目指していることを忘れてはならないことをご指導いただきました。今後は、評価の仕方や振り返りの仕方、どのような学び合いを目指すのかを考えながら授業改善を図ってまいります。