推進室情報 2008年
未来の教室(1)情報活用能力に関して考えたこと
『未来の教室』
この本と出会った人はみな、
「いつか、こういう教育をしてみたい・・・」
そう思ったに違いありません。
自分がその一人で、大きな影響を受けました。
著者は、当時筑波大学に勤務されていた中山和彦先生と東原義訓先生のお二人です。
20数年たつというのに、本書に書かれている内容は未だに色鮮やかです。
ここにはICT活用教育、いや教育そのものの原点が示されているともいえます。
久しぶりに本書を読み返してみました。
『コンピュータリテラシーのためにとくに努力や時間を費やさなくても、教育の場面にコンピュータを導入し、そこで成果を上げる事の方が大切であり、
また有効であると思う・・・』
「第二章 教育へのコンピュータの利用」に書かれているこのことばで、情報活用能力の操作スキルについて、改めて考えさせられました。
今後、情報教育の重要性から、情報活用能力に関して、操作スキルの規準リストのようなものが作成されることになります。
しかし、例えば、10分間に何文字程度の文字を入力することができる、といったようなスキル規準だけが一人歩きしてしまうのではないかという危惧を感じています。
市内の学校を見ても、情報活用能力の高いクラスでは、とりわけリテラシー教育をやっているわけではなく、教科で活用しているだけで高くなっているようです。
そのような指導をしている先生の頭の中はスキルの構造もしっかりとしています。それを外に出していないだけなのです。10分間に何文字入力できるかより、書きたいものが心に浮かぶ体験や考えがあるかのほうが重要です。そういうものがあれば、子ども達は必死になって書きます。そのような姿を何人も見てきました。要するに教師の指導力の問題です。子ども達のICTスキルがないから、授業中にそのような課題を出せないという先生がいますが、それは、児童がやり遂げるまで待てないだけなのです。成し遂げたという子ども達の達成感を共感した経験をもてば、このことは理解できると思います。情報活用能力を育成するためには、スキルの習得よりは、むしろ、活用場面を多く作ることが大切です。そういう意味では、教科の授業の中で、写真を観察記録として利用したことがあるとか、友達同士で掲示板のようなもので友達の作品に感想を書いたことがある、などという実際の活用場面のチェックリストを作成することが本当は必要なのかもしれません。
情報活用能力は、学習指導要領で示された教科や領域の内容を扱うときに必要となるものです。目的と内容に適した方法が実行されるべきなのです。方法だけを取り出して扱うものではありません。ある段階で、やむを得ず方法のみを単独に取り出して学習(練習)することもありますがこの方法が目的になってはいけないと考えます。